スクールアイドルに「股線」はいらない ~JAなんすん×「ラブライブ!サンシャイン!!」コラボ絵炎上に女ライバーが思うこと
いつものようにTwitterを見ていたら、大好きな「ラブライブ!」が炎上していたので驚いた。
(なんともひどいタイトルのまとめですが、事の起こりが分かりやすかったためご容赦ください)
「ラブライブ!サンシャイン!!」の主人公・高海千歌ちゃんの「西浦みかん大使」就任のニュースは、ただその事実と誓約書の内容(「西浦みかんをたくさん食べます」など)を見て「みかんが大好きな千歌ちゃんがみかん大使だなんて、かわいいなあ」とだけ感じていた。
しかし、改めて指摘を読んだうえで絵を見直して、いかに自分が「ラブライブ!」というコンテンツからの供給物に対し盲目的な肯定感情を持っていたのか、と反省したのである。
この記事では、今回のコラボ絵が炎上した理由、そして「股線」表現の「ラブライブ!」というコンテンツ内での位置を、ひとりの女ラブライバー*1の立場で考えていきたい。
1.コラボ絵がなぜ問題視されるのか
まずは改めて、件のツイートと写真を確認したい。
【沼津】JAなんすん様より熱いオファーを頂き、本日、高海千歌が『西浦みかん大使』に就任致しました!!
— ラブライブ!シリーズ公式 (@LoveLive_staff) 2020年2月12日
千歌ちゃんに代わって高海千歌役・伊波杏樹が、ららぽーと沼津にて行われた大使就任式に出席しました。
これからも沼津のみかんを、地元の元気を世界に伝えていきます!!🍊🍊🍊
#lovelive pic.twitter.com/gcqbnyHriR
いとおしそうにみかんに頬をよせ笑う千歌ちゃんは、「みかん大使」としてぴったりの愛らしさで描かれている。しかし、下半身に目を向けると、プリーツスカートからは股間あたりのラインが透けてみえているように描かれているのである。ここが、この絵が批判を浴びた原因だ。
こういった表現は確かに昨今の美少女絵ではよくみられるもので、正直なところ私は見慣れすぎていて何も感じなかった。千歌ちゃんというキャラクターに性的なものを感じたことが一切なかったからかもしれない。
しかし、改めて考えてみれば、この影は現実にはありえない「謎の影」である。薄い素材で、体のラインに沿って作られているものならあり得るかもしれないが、これは制服、しかも冬服である。伝統の女子高・浦の星女学院の制服がそのような制服に適さない素材で作られているわけがないだろう。
ただの「シワ」であり問題ない、とする声もあるようだが、そもそもこういうスカートにはこのような大きなシワはなかなかつくものではない。この写真に写る声優の伊波杏樹さんのスカートを見ても、このような影は全く見当たらない。当たり前だ。
つまり、現実にはあり得ない表現で「わざわざ」股という性的と思われても仕方のない部分のラインを強調していることが、この絵が批判を浴びる理由なのではないだろうか。
2.「ラブライブ!」と性的表現との距離
前述したように、このコラボ絵の問題点は「現実にはあり得ない表現で、性的と思われても仕方のない部分を強調した」ところにあると考えた。
しかし、私はこういった表現の全てを否定するわけではない。それこそエロゲームなど性的なものを描くことを目的としたコンテンツでこのような表現をするのは全く問題が無いと思っている(このような立場を取る理由については冗長になるため割愛します)。
ただ、「ラブライブ!」でこういった表現を行うのは全く相応しくないばかりか、「ラブライブ!」を不当に貶める結果につながるのではないだろうか。
今回の問題で初めて「ラブライブ!」を知った、という方も多いかもしれないが、「ラブライブ!」は他のアイドルものとは一線を画しているコンテンツである。端的に説明すると、高校生の女の子たちが≪自分たちの意思で≫、≪自分たちや自分たちの学校のために≫、部活動としてのアイドル活動、つまり「スクールアイドル」活動を行う物語なのである。
彼女たちが「スクールアイドル」として活動することに対し、大人や強い立場の者による強制や搾取は存在せず、ただそこにあるのは自発的な意志のみなのだ。
そういった背景の中、近頃の「ラブライブ!」のコンテンツからは「男性」の存在や視線が徹底的に排除されている。*2このことは、以下のリンク先のまとめを読んでいただければわかると思うが、明らかに製作側が意図を持って「男性」を「ラブライブ!」というコンテンツから排除しているのだ。
こういったコンテンツでありながらも、キャラクターたちに性的な魅力を見出している人々がいることも知っている。しかし、少なくとも「ラブライブ!」は本来、上の立場の人間からの搾取や「男性」の視線というものの無い世界で「スクールアイドル」として青春を駆け抜ける少女たちを描いている作品であるのだ。
そういった作品である以上、今回の「股線」のような性的と捉えられるような表現は異物でしかなく、作品本来の魅力を潰し、まだ「ラブライブ!」を知らない人がファンになる可能性を狭めてしまうのではないだろうか。
実際に、私と同じように考えているラブライバーは男女問わずいるようである。
3. まとめ
千歌ちゃんをはじめ、「ラブライブ!」シリーズに出てくるキャラクターたちはみんな、性的表現に頼らずとも、それどころか性的ではないからこそ魅力的で、輝いているのだと私は考える。そしておそらく、今回の「股線」も性的に描こうとしたというよりは、流行の絵柄を取り入れた……といった側面が大きいのではないだろうか。
いちファンの立場で要望してもどうにもならない話だろうが、「ラブライブ!」運営には、いま一度「ラブライブ!」というコンテンツがどんな武器を持っているか、そして(たとえ流行していても)絵の表現のひとつひとつがどういった意味を持っているのかということを考えてほしいと思う。